ATELIER DEN PLUS EGG
OKASHIYA Karhu
東京都杉並区 2021 /Nov/ 27 updatedアンティークをレストアした、世界にひとつのレモンケーキ専用ショーケース。
「『イギリスの博物館で使われていた古いキャビネットをレモンケーキのショーケースとして使いませんか?』DEN PLUS EGG担当者のYさんからそう言われたときに、お店のイメージがはっきりと浮かびあがりました」。キャビネットに黄色い包み紙にくるまれたレモンケーキをぎっしり並べると、世界にひとつだけのレモンケーキ専用のショーケースになりました。
デイリーな街のお菓子屋さん。
レモンケーキを中心にお酒にも合うお菓子を扱う『OKASHIYA Karhu』。Karhu〈カルフ〉はフィンランド語で「クマ」の意味で、ロゴマークには前足と鼻にアイシングがついたマスコットの“アイシングマ”のイラストがあしらわれています。
オーナーの松岡勇、聖子さんご夫妻は、元々生活雑貨や食品などを扱う企業に勤めており、飲食事業に携わっていた勇さんと商品企画やマーチャンダイジングの仕事をしていた聖子さんがともに独立して、一緒にお店をスタートさせました。「毎日召し上がっていただけてギフトにもできる、デイリーな街のお菓子屋さんを開きたかったんです」。これまでの仕事を活かし、誰もが親しめるお菓子がいいと、日本で生まれたレモンケーキをメインにした街のお菓子屋さんが誕生しました。
DEN PLUS EGGとの出会い。
最初にDEN PLUS EGGを知ったきっかけは、千駄ヶ谷にある『サルーズキッチンマーケット』という自然派ワインのあるチャイナ食堂。お料理はもちろんオリジナリティあふれる内装をとても気に入った松岡夫妻は、足繁く通っていました。ある日、お店のスタッフに設計会社を尋ねたところ、「DEN PLUS EGGです。お店の2階がオフィスですよ」という答えが。ふたりは早速DEN PLUS EGGのホームページでストアデザインの設計施工例を閲覧、するとそこに知人のお店である『café licht』(神戸)が紹介されていることに気づきました。行きつけのレストランと知人のお店がつながっている不思議な縁を感じながら、ふたりはDEN PLUS EGGにお店の設計をお願いすることに決めました。
担当設計者は『サルーズキッチンマーケット』と同じくYさん。不動産から一緒に探す方法を選び、まずは物件探しをスタート。なかなか物件は見つかりませんでしたが、Yさんとともに根気よく探している中でこの西荻窪の物件と出会いました。予定より広めの物件でしたが駅から10分と地の利もよくて迷わず決定、「わたしたちは店頭販売だけでなくオンライン販売もしているほか、企業向けの商品開発のサポートなどのコンサルティングなども行っていて、クライアントさんと打ち合わせのできるスペースや、通販の発送作業などもできるスペースも必要だと考えていたので、いまの広さでちょうどいいと思っています」と聖子さん。カフェ営業も予定している広々とした販売スペースの奥は、半分は厨房、もう半分はアイアンの室内窓で仕切られた包装や発送をする作業場と大きなミーティングルームになっています。
お店ができあがるまで。
初めての打合せでは、たくさんのイメージする写真を持参し、担当者と一緒に店舗の事例を見たりしながら「こういう感じが好きです」ということを共有しました。「内窓がほしいということを最初に話しました。お菓子をつくっているところも見えて、抜けのある感じにしたい」とふたりは希望を伝えました。
そうして最初に提案があったのが、お店の顔となるイギリスの博物館で使われていた古いキャビネットでした。サイドに開口部のある背の低いガラスケースは実用には難しいのですが、小さなレモンケーキなら高さもぴったり。レモンケーキをスムースに出し入れできるように真鍮のつまみをつけたオリジナルの引き板をつくり、世界にひとつのレモンケーキ専用のショーケースが誕生しました。
お店の主役は黄色いレモンケーキなので、壁の色はホワイトを基調にシンプルに。イギリスで使われていた銅の格子窓付きドアとグレイに塗装された大きな木製の窓枠のファサードは、どこかヨーロッパの通りにあるお店の雰囲気を感じさせます。「ウロコ形のアルチザンタイルが好きだから外壁に使いたい」との希望通り、ファサードの窓の下にはマーメイド・アルチザンタイルが貼られました。
先々は店内でカフェ営業を始める予定で、キッチンからコーヒーを出せるようにしたいと依頼、オークのかわいい小窓が出来上がりました。発送作業場&ミーティングルームに通じる入り口には、ブルーグレーのアンティークドアをセレクト、鍵がかかるよう実用性をもたせてレストアしました。ヴィンテージのテーブルやイス、アンティークの食器棚などもDEN PLUS EGGがヨーロッパで選んできたものです。聖子さんは言います「わたしたちは企業に勤めていたので、機能性を中心に考えるのですが、Yさんはそこにアンティークの魅力を加えて感覚やセンスで仕上げてくれました」。イメージを伝え、それを形にするというキャッチボールのような繰り返しがこの独自の空間を生み出していったのです。
言葉を超えて感覚で響き合う。
「ショーケースの上に灯りがほしいけれど、どういう照明がいいかわからなかったのでおまかせすると、イメージにぴったりのものを選んでくださいました」という聖子さん。カウンターの上にはブラックのシェイドのペンダントライトが2本、お菓子の上にはフランス製の白い陶器のランプシェイド、窓際にはナチュラルなカゴ編みランプシェイドが吊り下げられ、とてもいいバランスに仕上がりました。カゴ編みのランプは、イギリスのサフォークで暮らす染色作家のキルステン・ヘクターマンの仲間たちがケニアで製作したものです。
「壁に取り付けた棚にドライフラワーを飾りたいとさりげなく置いておくと、Yさんがそのドライフラワーをうまく取り入れてスタイリングをしてくれたんです。本当にステキで、その棚は今もその時にスタイリングをしてもらったままにしてあるんです」。Yさんと聖子さん、ふたりの感覚が合っていて多くを語らなくても分かり合えることもよかった点だと聖子さんは振り返ります。完成したお店の中で聖子さんが特に気に入った点は、レモンケーキのショーケースと内壁に付けられたフランスの大きな室内窓。キッチンに入ることが多い勇さんは、キッチンから小窓を通したカウンターや外の眺めがとても気に入っているそうです。
古材に大理石の天板を載せてオリジナルで作りつけられた店のカウンターには、看板商品の「レモンケーキ」をはじめ、ワインにもよく合う「エダムチーズと塩のクッキー」、やわらかな「生キャラメル」、白い雪玉のような「ブールドネージュ」など、さまざまな焼菓子が並びます。レモンケーキは甘酸っぱい爽やかな酸味としっとりした生地がなんとも言えず優しい味わいです。どのお菓子も小麦粉やバター、レモンなどの材料を複数使い分けながらそれぞれの持ち味を引き出し、できるだけシンプルに素材の味を活かすようにつくることを心がけているといいます。
今日もショーケースには、たわわに実った黄色い果実のようにレモンケーキが並んでいます。ご近所の常連さんから、遠くから来てくださる方々まで、それぞれが手にしたショッピングカゴの中にはたくさんのレモンケーキが顔をのぞかせています。
OKASHIYA Karhu
東京都 杉並区西荻北4-4-5
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