RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
パン屋 hirameki
兵庫県神戸市 2021 /Oct/ 02 updated目指したのは六甲の街のパン屋さん。

六甲山に向かう坂道の途中にある小さな街のパン屋さんは、城間敦太さん、知子さんご夫婦が営む『パン屋hirameki』。ショーケースには、フランスのパンをベースに、全粒粉と天然酵母で仕込んだパン・ド・カンパーニュをはじめ、香ばしいバゲットやパン・ド・ミ、さらには名物の手折り生地のアップルパイ、あんぱん、フォカッチャまでいろいろなパンが並びます。朝にはパンを焼くいい香りが漂ってきます。
三宮のベーカリーから独立した敦太さんは、家族で暮らす環境を考えて阪急六甲の界隈で物件を探し、ほどなく理想的な広さの物件を見つけました。店舗デザインを依頼する会社をWEBで探していたところ、自分たちの好みの事例をたくさん手がけているDEN PLUS EGGを見つけました。そのことを友人に話すと、不思議なことに友人もちょうどDEN PLUS EGGをすすめようと思っていたと偶然の出来事がありました。ふたりで初めて苦楽園のDEN PLUS EGGのオフィス(現『FLUFFY AND TENDERLY』)に行った日には、その雰囲気にときめき、その後も打ち合わせで訪れるたびにワクワクしていたといいます。
お店のイメージづくりについては、どこかにある建物を参考にして決め込むというより、フィーリングやインスピレーションを大切にしておまかせし、希望としてオリーブ・グリーンの色を使いたいということだけを伝えました。設計担当者から上がってきたプランは、大きなガラス窓の両開きの扉の横にかわいい小窓のついたシンプルなもので、一目で気に入ったと言います。
外観はホフホワイトの壁にスモーキーなブルーグレーの扉、店内の壁はクリーム色で、腰モジュール(腰壁)というヨーロッパの住宅などに使われる壁板をとりつけそこを希望のオリーブ・グリーン色にと、いくつかの色を塗り分けました。六甲山のグリーンと神戸港のブルーのようにとてもなじみのいいコンビネーションです。売り場と厨房が扉なしで隣あっているので行き来がしやすく、敦太さんは厨房の壁から顔を出せばすぐ売り場のお客さまにあいさつできるところが気に入っていると言います。

売り場に立つ知子さんは、真正面に見える小さな十字の格子の入った窓がお気に入りです。また、厨房には三日月型の横長の窓があり、厨房からは外の風景が見えます。ある時、お父さんに肩車された子どもの顔だけがその窓からのぞき込むという微笑ましい光景もあったそうです。中は見えすぎずでも自然光は入るように、視覚的な遊びのあるデザインを取り入れて道ゆく人にお店の印象を残してもらおうと、ひとつの窓の形にもDEN PLUS EGGの設計スタッフによる工夫がなされていたのです。
2020年の6月にオープン時にはあまり宣伝をせずに、お店の貼り紙だけでオープンのお知らせをし、口コミだけで始めたのですが、今では地元の人が日常に足を運ぶ街のパン屋としてにぎわいを見せています。敦太さんは「1年経ちましたが、毎日本当に楽しいんですよ! でも今をベストとは思わずに、常に理想を追求していきたいです」と言います。そして、将来は石窯を自分でつくってパンを焼きたいという夢も持っています。お気に入りのお店に立つ知子さんと、隣の厨房で自分のパンを自由に焼く敦太さん。彼はよく踊るようにパンを捏ねて焼いているそうです。ふたりとも毎日が楽しいと笑います。
パン屋 hirameki
神戸市灘区篠原本町1-3-3六甲グランフォーレ1階
観音開きのドアの取っ手はアンティークの真鍮製。
レジカウンターはアンティークの机、可動式の造作棚はシンプルに。
ブルーグレーのドアの向こうが売り場で三日月窓の向こうがベーカリーキッチン。
クリーム色と壁とオリーブグリーンの腰壁、落ち着く組み合わせ。
床のモルタルがカッコいい。
キッチン内からお店を望む。ゆるくつながった空間だからアイコンタクトで仕事もできます。
男の子が覗き込んだ三日月窓には、ガレット・デ・ロワに入れられていたアンティークの陶器のフェーブたちが。
折りパイをすべて手で折ってつくるアップルパイが人気。
アップルパイの材料は、手で折ったパイ生地とりんごだけ。オリーブグリーンの腰壁に映える。




